やさしくてわかりやすい文章とは

LLブックは、“やさしくてわかりやすい本”という意味です。では、“やさしくてわかりやすい”とは、どういうことでしょうか。具体的にいえば、どういう文章が“やさしくてわかりやすい”といえるのでしょうか。

この問いに対しての絶対的な答えはありません。例えば、知的障がいのある人にとっての“やさしくてわかりやすい”は、同じ年齢であっても言語理解の発達の状態によって、異なります。そのため、日本をはじめ世界各国で、試行錯誤しながら“やさしくてわかりやすい”を追究している最中にあります。

もちろん、その試行錯誤のなかから、“やさしくてわかりやすい”の傾向や特徴は、わかってきています。そして、それらは、「ガイドライン」の形でまとめられ、公表されています。
1つは、国際的な「ガイドライン」で、IFLA(国際図書館連盟)の特別なニーズのある人々に対する図書館サービス分科会が2010年に作成した『読みやすい図書のためのIFLA指針(ガイドライン)改訂版』です。1997年に出された指針(ガイドライン)を改訂したものです。日本語訳された冊子版は、2012年6月に、公益社団法人日本図書館協会発行で刊行されています(写真1)。

写真1
『読みやすい図書のためのIFLA指針(ガイドライン)改訂版』書影

冊子版のPDFデータはIFLAのウェブサイトで公開されていて、誰でもダウンロードして読むことができます。URLは https://www.ifla.org/files/assets/hq/publications/professional-report/120-ja.pdf です。主な目次構成は、「1.読みやすいとはどういうことか?」「2.読みやすい図書のニーズ」「3.読みやすくするための支援」「4.対象となる人々」「5.編集の工夫」「6.さまざまなジャンルとメディア」「7.出版のプロセス」「8.マーケティング」「9.科学的な研究の必要性」「10.読みやすい図書ネットワーク」となっています。
もう1つは、日本で作成された「ガイドライン」です。公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会の図書館等のためのわかりやすい資料提供ガイドライン作成委員会が2017年3月に作成した『図書館等のためのわかりやすい資料提供ガイドライン』です(写真2)。

写真2
『図書館等のためのわかりやすい資料提供ガイドライン』書影

こちらは、2017年4月7日現在ではウェブには公開されていませんが、全国の公共図書館に冊子版が頒布されていますので、お近くの図書館で閲覧することができます。主な目次構成は、「1.はじめに」「2.わかりやすい資料の3つの製作プロセス」「3.代替資料提供のための著作権の制限」「4.本ガイドラインの対象となる人々とそのニーズ」「5.わかりやすい資料の作成について」「6.電子的な技術の活用」「7.図書館でわかりやすい資料を提供する」「8.関係者(ステークホルダー)と図書館の連携」「9.普及に向けて」「10.課題と展望」の全10章と巻末の「資料」です。

これからLLブック作りに取り組もうとする人は、これらの「ガイドライン」をぜひ参考にしてほしいと思います。

(専修大学文学部教授 野口武悟)

【文献】

  • 国際図書館連盟特別なニーズのある人々に対する図書館サービス分科会編/日本図書館協会障害者サービス委員会監訳/日本障害者リハビリテーション協会訳『読みやすい図書のためのIFLA指針(ガイドライン)』日本図書館協会、2012年
  • 図書館等のためのわかりやすい資料提供ガイドライン作成委員会編/日本図書館協会障害者サービス委員会監修『図書館等のためのわかりやすい資料提供ガイドライン』日本障害者リハビリテーション協会、2017年